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カードの裏は人か神か・2 不条理世界の7人
槇嶋春彦はミステリー部の部員である。
ミステリー部とは、宇宙人や妖怪…様々な非日常を考えたり学んだりする部活である。
昔は探偵ブームの再来か何かでミステリー探偵部と名乗っていたが、今はそれを名乗る元気とかそういうものが欠如していた。
今の若者には野性はあるが闘争心が無いのだ。
ミステリー部部長はそう確信していた。部長さんはミステリー探偵部の頃からの部員である。
彼がミステリー探偵部を改名したわけだが、それを止めるものはいなかった。
春彦はそれを止めようとした。しかし、恐るべき多数決社会…。
次第に彼も闘争心を失い、止めようとは考えなくなった。
今の若者には闘争心が無いのだ。
部長さんはそれを嘆き、自分が一世代前の人間であるという事実にさらに嘆いた。
春彦は自分の家の門をくぐる。
彼は自分の家が嫌いだった。
彼が家を嫌う理由は、自分の父親と二人暮しで、その父親を死ぬほど嫌っているからだ。
嫌いなものは嫌いという言葉が存在する。それで良い。
槇嶋春彦はその言葉、その理念を貫いていた。一生好くことは無いだろう。
「おかえり」
父親からの声が聞こえる。声には重みも何もない。虚ろだ。
春彦もまた虚ろな応対をする。
「ただいま」
家族の会話はそれで終わる。
お互いに干渉は無い。
春彦にとって母親の存在が大きかった。
槇嶋春彦の父 槇嶋春光(まきしまはるみつ)にとって妻の存在は大きかった。
肉体が砕け散っても、それは変わらなかった。
それだけだ。
それだけでこの家族は虚ろになる。
理由は充分であった。
春彦は自室の電気を付けて、そこに籠もり、そして目を瞑った。
すると不思議な事が起きていた。
自室のベットに金髪の青年が座っていたのだ。
「この家はとても虚ろだね」
青年は微笑みながら優しい声で言った。しかし温かみは無い。
「な…なん、ですかあんたは?」
春彦が動じないわけが無い。自分の家の自分の部屋、つまり他との干渉を一切拒む空間で、その青年は存在していたのだ。
死ぬほどおかしい話ではないが、かなりおかしい。
「私が何者かなんて下らない。今はこの家の現状を話している…そうだろ?」
確かにそうなのかもしれない。
しかし、春彦には彼という存在が認められなかった。
「け…警察呼ぶよ」
「そう邪険にしないで、少しは人の話を聞こうよ…とても興味深いよ?特にこれからの君には」
「これからの…僕?」
青年はにやりと微笑んだ。小悪魔のような微笑。
「この世界はこの家と同じようにとても虚ろさ。何故かって?それはね…誰かが求めれば世界にはひびが入るからさ」
その時、とても大きな、鼓膜を突くような音が聞こえた。
そして今まで点いていた電気が消えた。
01月17日 (木)20時53分 |連載小説『カードの裏は人か神か』 │▲ |コメント(0) |トラックバック (0)
カードの裏は人か神か・1 不条理世界の7人
その時、神は死んだのだと思た。
世界が不条理だ…そう感じた時に。
目の前の少年は口にする。
この世界の神は僕だと。
「ある日目覚めたら地球が滅んでいたなら君はどうする?」
夜のファーストフード店での会話にしてはあまりにも特徴的だった。
適当な与太話でケリをつければ終わるだろうが、とにかく特徴的だった。
その話をし始めた金髪の青年。つまりは外人。その彼はとても綺麗に日本語を喋っていたのだ。
その綺麗な日本語で話すからこそ特徴的なのである。
「苦しまずに死ぬ方法を見つける」
それが相方である日本人の返答であった。
とても冷めているが与太話相手には良い返答である。
二人は机に向かい合って座っていた。
「潔いね。それが大和魂ってやつかい?」
「死ぬ時だけは楽したいと思っているだけだ」
その日本人はココ数日の残業続きで疲れているのだ。楽の無い仕事を選んだことに何年も後悔している。
だが、それでも仕事は完璧にこなしているエリートだ。
「そういう君にはこれをあげよう」
そう言って金髪の青年は白い布を渡した。中には何かが入っているらしく重みがある。
ゆっくりと日本人はその包みを開いた。
拳銃だ。
「ベレッタM92、純粋なイタリア製のやつだから安心して」
「…何故こんな物を?」
動揺をしていないかのようにも見える冷静な瞳。しかし、本心は焦っている。
日本人の彼が安々とこんなものに触れるわけが無いからだ。
「さぁね」
金髪の青年は小悪魔のような笑みを見せる。その笑みは他人にとっては本当に小悪魔のようだった。
彼の行為は意味が分からないからだ。
金髪の青年が去り、残った日本人はその包みを閉じた。
その包みを自分の手提げ鞄に入れ、彼は立ち上がった。
「ちょっと!」
隣の席に座っていた女の子が彼に話しかけてくる。
「何か?」
男はその女の子に視線を向ける。別に冷たいわけではなく、彼は彼女と初対面なのだ。
「あの男の人綺麗な人だったけど…あなたの親友?紹介してくれない?」
初対面だというのに遠慮の無い話方。彼にとって苦手なタイプの人間であった。
「いや…彼とはさっき会ったばかりだ」
満月が満ちている。こういう夜を良い夜と言うのだろう。
「狼男でも出そうな良い夜だぜ」
暗い裏路地で男は言った。
男はその路地で毎夜を過ごしているホームレスというやつだ。
家無しを他人に勧めるという変わった人間であるこの男は煙草を咥えて夜空を見ていた。
近所を徘徊する野良猫を引き連れ、近所では猫男と呼ばれている。
猫男と呼ばれているからといって俊敏な動きをするわけでもなく、引っ掻きが得意とかいうわけでもなかった。
「お…」
猫男氏の目に入った青年。高校の制服を着ている青年である。
それは猫男氏の知っている人間である。
ご近所付き合いを円満にしているホームレスであるからして、何処何処のお坊ちゃんという事はすぐに分かるのだ。
強いて言うならば猫男と呼ばれるもう一つの理由は夜目が効くところだ。
「槇嶋のお坊ちゃんかい。今日も夜遅く部活かい?」
気軽に声を掛ける猫男氏。
槇嶋のお坊ちゃんと呼ばれたその青年 槇嶋春彦(まきしまはるひこ)は頷く。
「はい」
「青春を部活に使うのは良いが、文化系の部活だからね…一眼に良いとは言い切れないかな。まぁいいや、ご苦労さん」
なんでもない会話である。
世界が不条理だ…そう感じた時に。
目の前の少年は口にする。
この世界の神は僕だと。
「ある日目覚めたら地球が滅んでいたなら君はどうする?」
夜のファーストフード店での会話にしてはあまりにも特徴的だった。
適当な与太話でケリをつければ終わるだろうが、とにかく特徴的だった。
その話をし始めた金髪の青年。つまりは外人。その彼はとても綺麗に日本語を喋っていたのだ。
その綺麗な日本語で話すからこそ特徴的なのである。
「苦しまずに死ぬ方法を見つける」
それが相方である日本人の返答であった。
とても冷めているが与太話相手には良い返答である。
二人は机に向かい合って座っていた。
「潔いね。それが大和魂ってやつかい?」
「死ぬ時だけは楽したいと思っているだけだ」
その日本人はココ数日の残業続きで疲れているのだ。楽の無い仕事を選んだことに何年も後悔している。
だが、それでも仕事は完璧にこなしているエリートだ。
「そういう君にはこれをあげよう」
そう言って金髪の青年は白い布を渡した。中には何かが入っているらしく重みがある。
ゆっくりと日本人はその包みを開いた。
拳銃だ。
「ベレッタM92、純粋なイタリア製のやつだから安心して」
「…何故こんな物を?」
動揺をしていないかのようにも見える冷静な瞳。しかし、本心は焦っている。
日本人の彼が安々とこんなものに触れるわけが無いからだ。
「さぁね」
金髪の青年は小悪魔のような笑みを見せる。その笑みは他人にとっては本当に小悪魔のようだった。
彼の行為は意味が分からないからだ。
金髪の青年が去り、残った日本人はその包みを閉じた。
その包みを自分の手提げ鞄に入れ、彼は立ち上がった。
「ちょっと!」
隣の席に座っていた女の子が彼に話しかけてくる。
「何か?」
男はその女の子に視線を向ける。別に冷たいわけではなく、彼は彼女と初対面なのだ。
「あの男の人綺麗な人だったけど…あなたの親友?紹介してくれない?」
初対面だというのに遠慮の無い話方。彼にとって苦手なタイプの人間であった。
「いや…彼とはさっき会ったばかりだ」
満月が満ちている。こういう夜を良い夜と言うのだろう。
「狼男でも出そうな良い夜だぜ」
暗い裏路地で男は言った。
男はその路地で毎夜を過ごしているホームレスというやつだ。
家無しを他人に勧めるという変わった人間であるこの男は煙草を咥えて夜空を見ていた。
近所を徘徊する野良猫を引き連れ、近所では猫男と呼ばれている。
猫男と呼ばれているからといって俊敏な動きをするわけでもなく、引っ掻きが得意とかいうわけでもなかった。
「お…」
猫男氏の目に入った青年。高校の制服を着ている青年である。
それは猫男氏の知っている人間である。
ご近所付き合いを円満にしているホームレスであるからして、何処何処のお坊ちゃんという事はすぐに分かるのだ。
強いて言うならば猫男と呼ばれるもう一つの理由は夜目が効くところだ。
「槇嶋のお坊ちゃんかい。今日も夜遅く部活かい?」
気軽に声を掛ける猫男氏。
槇嶋のお坊ちゃんと呼ばれたその青年 槇嶋春彦(まきしまはるひこ)は頷く。
「はい」
「青春を部活に使うのは良いが、文化系の部活だからね…一眼に良いとは言い切れないかな。まぁいいや、ご苦労さん」
なんでもない会話である。


