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短編『ある男の2月14日、もしくは2月15日』
2月14日 23時34分
それは人間の男女にとって特別な日の終わり
特別だからと言って重要でもなく、特別だからと言って強制力はなく
実際、この男 竹橋亮太(たけはしりょうた)にとってはあまり関係の無いお話
しかし、事は一変する
「兄さん、渡すの忘れてたけどホレ」
妹の竹橋亮子(たけはしりょうこ)に投げ渡されたチョコレート
所謂、義理チョコだ
兄弟姉妹に本命も義理もありゃしない
だが、この『投げ渡す』という行為が兄である亮太にとって許せなかった
「食いもんを粗末にするな!こんなもんはいらん!」
投げ渡されたチョコレートを投げ返して、亮太は夜の街へ走り出した
「兄さんが一番食いもん粗末にしてんじゃん」
妹の言い分は的を射ていたが、最早兄貴には聞き取れていなかった
2月15日 0時5分
「大体、バレンタインなんざ日本人に関係ねーッつの!この商業国家が!」
何年も続いている行事を今更否定する現代っ子竹橋亮太は旅に出る決意をした
旅と言っても・・・単なる家でクラスであるが・・・
流石高校生といえば高校生なのかもしれないパターン
要は彼はバレンタインと言う日が不満なのである
不満が募って爆発しそうである
とりあえず、最寄のコンビニで身支度である
財布は新幹線に乗るとか大それたことはできないまでも、それ相応の札が入っていた
これを使わない手は無い
ふと、コンビニに入ってすぐのところ
レジの手前に大層な台が置かれ、その上には亮太の天敵 チョコレートが置かれていた
「はぁ・・・」
ため息一つ
亮太は思う
『欲しい物は欲しいのだ』と
それが男の悲しい性である
コンビニを意気消沈しながら探索していると、雑誌のコーナーのところに見覚えのある人が・・・
名前は神野瀬優(かみのせゆう)
クラスメートである
普段は優等生なのだが、こんな時間にコンビニで立ち読みとは・・・と思ってしまう亮太だった
「ようっ!」
何の気なしにいきなり挨拶をする亮太
優は流石にビックリしたらしく、手に持っている雑誌を落とした
「な・・・あんたは補導員か!」
「ちゃうちゃう!俺だ、クラスメートの」
「・・・あぁ、分かった」
落とした雑誌を拾い、立ち読みを続行する
会話が終わった
フォローするかの如く、優が口を開く
「なに?普段優等生面してるのにこんなところで立ち読みってのは意外?」
「いや、別にそーじゃねぇよ。ただ、こんな時間にこんな所で知り合いに会うと思わなかったからな」
「ふーん・・・まぁ、そうかな」
会話が終わった
フォローするかの如く、亮太が口を開く
「神野瀬はさぁ・・・いつもこの時間にここにいるのか?」
「いないよ、たまたま・・・ってか、いたら駄目だろ」
「そりゃぁ、そうか」
会話が終わった
二人は遂に黙ってしまった
そんな二人のうちの一人、つまりは優だ
優が雑誌を本棚に戻す
「気が散るから帰るよ」
「おい、ちょっと待てよ」
去ろうとする優の手を掴む、亮太
「何?」
「いや、別に・・・ただ、暇ならさ・・・ちょっと付き合ってくれよ」
2月15日 0時50分
夜の高校というのは怖くもあり、寂しくもあり、不思議であった
ホラーとミステリーの融合
まるでそこは映画の世界
二人はそこに来ていた
「こんなところでどうするの?」
亮太は何も考えていなかった
だが、何かしようとは思った
「いや・・・タイムマシンでも埋めてみようかなって」
「スコップも持ってきてないのにタイムマシン?」
最早、何も考えていないのが丸分かりである
「私、帰る」
「おい、ちょっと待てよ!」
もぉやるしかない
亮太は指で穴を掘り始めた
校庭のふちにある木の下
彼はそこを彫る
必死さを見せれば彼女の何かが変わる気がする
そう思った
でも、彼女は彼の前から姿を消していた
しばらく穴を掘って指を止めた
「俺・・・何やってんだろ」
自分が馬鹿に思えた
「タイムマシン埋めるんでしょ?」
その声は亮太の後ろから聞こえてきた
投げ渡されるスコップ
優は何処からかスコップを取ってきてくれたんだ
「埋めるもの決めたから早く彫ってよ」
亮太に喜びという感情が生まれた
彫っている最中、後ろから優の声が聞こえてきた
「私さ、バレンタインだからって・・・好きな人に告ったんだよ」
亮太は黙って聞きつつ彫り続ける
「でもさ・・・無理だって」
亮太はスコップを止めない
「はは、何言ってんだろ、あたし」
「彫れたぞ」
そこに埋められたのは包装紙に包まれた優が作ったチョコレートだった
亮太はそれに対して一言も口にしなかった
欲しいとかは禁句だ
さて・・・自分が埋めるものは何にしようか、と
亮太はポケットを漁る
しかし、そこには財布しか入っていなかった
そこで苦し紛れの考えを思いついた
財布から一万円札を穴に投げ入れた
「な・・・なにしてんの」
「未来の俺が困ってたときの為に、な」
優はそれを見て呆れたような顔をしている
「あなた、馬鹿でしょ?」
「おい!俺はマジメにだな・・・」
ふと、優は自分の涙が止まっているのに気付いた
「じゃあな」
亮太はそんな優に別れの言葉をかけた
「また明日、学校でね」
2月15日、1時57分
男の旅は終わった
終着駅は自宅である
自分の部屋の机のど真ん中に砕けたチョコレートが置かれていた
亮太はそれをゆっくりと口に運ぶ
気が付けば男は満身創痍
だが、男はバレンタインの日を満足していた
何度かやったから既に得意技である
自己満足は
それは人間の男女にとって特別な日の終わり
特別だからと言って重要でもなく、特別だからと言って強制力はなく
実際、この男 竹橋亮太(たけはしりょうた)にとってはあまり関係の無いお話
しかし、事は一変する
「兄さん、渡すの忘れてたけどホレ」
妹の竹橋亮子(たけはしりょうこ)に投げ渡されたチョコレート
所謂、義理チョコだ
兄弟姉妹に本命も義理もありゃしない
だが、この『投げ渡す』という行為が兄である亮太にとって許せなかった
「食いもんを粗末にするな!こんなもんはいらん!」
投げ渡されたチョコレートを投げ返して、亮太は夜の街へ走り出した
「兄さんが一番食いもん粗末にしてんじゃん」
妹の言い分は的を射ていたが、最早兄貴には聞き取れていなかった
2月15日 0時5分
「大体、バレンタインなんざ日本人に関係ねーッつの!この商業国家が!」
何年も続いている行事を今更否定する現代っ子竹橋亮太は旅に出る決意をした
旅と言っても・・・単なる家でクラスであるが・・・
流石高校生といえば高校生なのかもしれないパターン
要は彼はバレンタインと言う日が不満なのである
不満が募って爆発しそうである
とりあえず、最寄のコンビニで身支度である
財布は新幹線に乗るとか大それたことはできないまでも、それ相応の札が入っていた
これを使わない手は無い
ふと、コンビニに入ってすぐのところ
レジの手前に大層な台が置かれ、その上には亮太の天敵 チョコレートが置かれていた
「はぁ・・・」
ため息一つ
亮太は思う
『欲しい物は欲しいのだ』と
それが男の悲しい性である
コンビニを意気消沈しながら探索していると、雑誌のコーナーのところに見覚えのある人が・・・
名前は神野瀬優(かみのせゆう)
クラスメートである
普段は優等生なのだが、こんな時間にコンビニで立ち読みとは・・・と思ってしまう亮太だった
「ようっ!」
何の気なしにいきなり挨拶をする亮太
優は流石にビックリしたらしく、手に持っている雑誌を落とした
「な・・・あんたは補導員か!」
「ちゃうちゃう!俺だ、クラスメートの」
「・・・あぁ、分かった」
落とした雑誌を拾い、立ち読みを続行する
会話が終わった
フォローするかの如く、優が口を開く
「なに?普段優等生面してるのにこんなところで立ち読みってのは意外?」
「いや、別にそーじゃねぇよ。ただ、こんな時間にこんな所で知り合いに会うと思わなかったからな」
「ふーん・・・まぁ、そうかな」
会話が終わった
フォローするかの如く、亮太が口を開く
「神野瀬はさぁ・・・いつもこの時間にここにいるのか?」
「いないよ、たまたま・・・ってか、いたら駄目だろ」
「そりゃぁ、そうか」
会話が終わった
二人は遂に黙ってしまった
そんな二人のうちの一人、つまりは優だ
優が雑誌を本棚に戻す
「気が散るから帰るよ」
「おい、ちょっと待てよ」
去ろうとする優の手を掴む、亮太
「何?」
「いや、別に・・・ただ、暇ならさ・・・ちょっと付き合ってくれよ」
2月15日 0時50分
夜の高校というのは怖くもあり、寂しくもあり、不思議であった
ホラーとミステリーの融合
まるでそこは映画の世界
二人はそこに来ていた
「こんなところでどうするの?」
亮太は何も考えていなかった
だが、何かしようとは思った
「いや・・・タイムマシンでも埋めてみようかなって」
「スコップも持ってきてないのにタイムマシン?」
最早、何も考えていないのが丸分かりである
「私、帰る」
「おい、ちょっと待てよ!」
もぉやるしかない
亮太は指で穴を掘り始めた
校庭のふちにある木の下
彼はそこを彫る
必死さを見せれば彼女の何かが変わる気がする
そう思った
でも、彼女は彼の前から姿を消していた
しばらく穴を掘って指を止めた
「俺・・・何やってんだろ」
自分が馬鹿に思えた
「タイムマシン埋めるんでしょ?」
その声は亮太の後ろから聞こえてきた
投げ渡されるスコップ
優は何処からかスコップを取ってきてくれたんだ
「埋めるもの決めたから早く彫ってよ」
亮太に喜びという感情が生まれた
彫っている最中、後ろから優の声が聞こえてきた
「私さ、バレンタインだからって・・・好きな人に告ったんだよ」
亮太は黙って聞きつつ彫り続ける
「でもさ・・・無理だって」
亮太はスコップを止めない
「はは、何言ってんだろ、あたし」
「彫れたぞ」
そこに埋められたのは包装紙に包まれた優が作ったチョコレートだった
亮太はそれに対して一言も口にしなかった
欲しいとかは禁句だ
さて・・・自分が埋めるものは何にしようか、と
亮太はポケットを漁る
しかし、そこには財布しか入っていなかった
そこで苦し紛れの考えを思いついた
財布から一万円札を穴に投げ入れた
「な・・・なにしてんの」
「未来の俺が困ってたときの為に、な」
優はそれを見て呆れたような顔をしている
「あなた、馬鹿でしょ?」
「おい!俺はマジメにだな・・・」
ふと、優は自分の涙が止まっているのに気付いた
「じゃあな」
亮太はそんな優に別れの言葉をかけた
「また明日、学校でね」
2月15日、1時57分
男の旅は終わった
終着駅は自宅である
自分の部屋の机のど真ん中に砕けたチョコレートが置かれていた
亮太はそれをゆっくりと口に運ぶ
気が付けば男は満身創痍
だが、男はバレンタインの日を満足していた
何度かやったから既に得意技である
自己満足は
02月15日 (金)14時48分 |短編小説 │▲ |コメント(0) |トラックバック (0)
短編『ウラヌスの子 後編』
「この世界は美しいよ。汚いところ全部合わして全部美しいよ、ラキヲ」
この女は難しいことを言った
俺は少し止まってしまった
この女は意外なことを口にしたものだと
そしてその言葉は俺には理解できなかった
「例えるならば、お前はその辺に落ちている空き缶を美しいと言うのか?汚く、環境破壊…何処に美しさがある?」
俺は少々、怒っているのかもしれない
人間の世界に何かしらの希望があるのだろうか?
そう思い始めたのは力を求めてからだ
踏まれた花々は何処までいっても汚い
訓練の中、踏んでしまった花を見て思った
「環境破壊の空き缶も、それを掃除する人がいる。美しいとは思わない?環境破壊の中で得られる美しさ、そして、破壊から救われる世界の美しさ」
この女は真顔でそう言った
この女は…恐かった
我が父よりも
「この世界の大半は醜悪な臭い、醜悪な姿で構成されている」
父にそう言われ、俺は育ってきた
父は美しいと思う物以外、存在を認めなかった
尊敬していた父が言うのだ、当たり前だと思った
しかし、俺は背中に大きな傷を背負った
「ラキヲ…お前の歌はこの世で一番の美しさがある。しかし、美しき歌声も、宿主が美しくなければ意味が無い」
「お父様…?」
「お前は美しくない。だから私の子供では無い」
「待ってください!お父様!!おとぉーさま!!!」
「この世界に歌が無くなったら、汚い画像と臭い匂いしか残らないだろう。そう思って生きてきた」
俺は独り言のように呟いた
返答など要らない
俺はただ、聞いてほしかっただけだ
ギュッ…
女は俺の小さな体を抱きしめた
「じゃあ、私も汚い画像?臭い匂い?」
「…」
そんなことはない
温もりがある
しかし答えられなかった
「歌をうたってあげる。子守歌を。即興だけど聞いて」
それはこのような歌詞だった
『夢の中で歩いているあなた
何故そんなことを言うのか?
それはあなたが目覚めないから
何故そんなことを言うのか?
それはあなたが前を見ないから』
前…
つまりは物の真価ということであろうか?
女の歌は今の今まで存在せずに先程生まれ出たことがわかるほどの作りかけの歌だった
俺はその歌を聞いて、知らずに涙を流していた
これは父を綺麗に否定にする歌だった
俺は女に布団を借りて眠りにつく
「…何故、俺をココに連れてきた?」
ふと、俺は起きているか分からない女に向かって言った
「…私にはあなたと同じくらいの子供がいたのよ」
そうか…
母親…だったのか
「心臓が悪くてなににも消極的…本当は夢があるのにずっと黙ってたのよ。…母親である私に遠慮して…前を見て、私と夢を共有してくれたら私は人生を賭けてでもあの子に協力してあげたわ…」
俺は決心がついていた
女から貰った子守歌を父にぶつける
それが唯一、父に勝つ方法
父にあの歌を聞かせ、父に『理解という言葉』を覚えさせるしかない
絶大な力を持つ父に勝つにはそれしかなかった
俺は女の部屋を抜けだした
勿論、女の俺との記憶も消した
俺は宇宙を目指した
宇宙統一艦隊
俺はそれに向かって歌を口ずさんだ
「ラキヲ…?」
父の声が聞こえた
「私…あれ?昨晩何してたんだっけ…?」
私は朝起きて、ぼーっとしていた
昨晩、酒を飲んだ覚えは無い
でも記憶が無いとは…私も老けたか…ははは
ふと、昨日まで埃を被っていたはずのラジカセが机の上に置いてあった
録音ボタンが押されていた
ということは間違えて空テープをずっと上書きしていたわけか…
何故だか、その時の私は録音したものを聞きたくなっていた
カチッ
それは男の子の声だった
『夢の中で歩いているあなた
何故そんなことを言うのか?
それはあなたが目覚めないから
何故そんなことを言うのか?
それはあなたが前を見ないから』
綺麗な歌声
良い歌詞だった
あの子を失って、立ち直れ無い自分に対して喝を入れるような歌だった
知らず、私は涙を流していた
今日は快晴だ
まるで誰かが世界を救ったかのように
私は外に出掛けることにした
この女は難しいことを言った
俺は少し止まってしまった
この女は意外なことを口にしたものだと
そしてその言葉は俺には理解できなかった
「例えるならば、お前はその辺に落ちている空き缶を美しいと言うのか?汚く、環境破壊…何処に美しさがある?」
俺は少々、怒っているのかもしれない
人間の世界に何かしらの希望があるのだろうか?
そう思い始めたのは力を求めてからだ
踏まれた花々は何処までいっても汚い
訓練の中、踏んでしまった花を見て思った
「環境破壊の空き缶も、それを掃除する人がいる。美しいとは思わない?環境破壊の中で得られる美しさ、そして、破壊から救われる世界の美しさ」
この女は真顔でそう言った
この女は…恐かった
我が父よりも
「この世界の大半は醜悪な臭い、醜悪な姿で構成されている」
父にそう言われ、俺は育ってきた
父は美しいと思う物以外、存在を認めなかった
尊敬していた父が言うのだ、当たり前だと思った
しかし、俺は背中に大きな傷を背負った
「ラキヲ…お前の歌はこの世で一番の美しさがある。しかし、美しき歌声も、宿主が美しくなければ意味が無い」
「お父様…?」
「お前は美しくない。だから私の子供では無い」
「待ってください!お父様!!おとぉーさま!!!」
「この世界に歌が無くなったら、汚い画像と臭い匂いしか残らないだろう。そう思って生きてきた」
俺は独り言のように呟いた
返答など要らない
俺はただ、聞いてほしかっただけだ
ギュッ…
女は俺の小さな体を抱きしめた
「じゃあ、私も汚い画像?臭い匂い?」
「…」
そんなことはない
温もりがある
しかし答えられなかった
「歌をうたってあげる。子守歌を。即興だけど聞いて」
それはこのような歌詞だった
『夢の中で歩いているあなた
何故そんなことを言うのか?
それはあなたが目覚めないから
何故そんなことを言うのか?
それはあなたが前を見ないから』
前…
つまりは物の真価ということであろうか?
女の歌は今の今まで存在せずに先程生まれ出たことがわかるほどの作りかけの歌だった
俺はその歌を聞いて、知らずに涙を流していた
これは父を綺麗に否定にする歌だった
俺は女に布団を借りて眠りにつく
「…何故、俺をココに連れてきた?」
ふと、俺は起きているか分からない女に向かって言った
「…私にはあなたと同じくらいの子供がいたのよ」
そうか…
母親…だったのか
「心臓が悪くてなににも消極的…本当は夢があるのにずっと黙ってたのよ。…母親である私に遠慮して…前を見て、私と夢を共有してくれたら私は人生を賭けてでもあの子に協力してあげたわ…」
俺は決心がついていた
女から貰った子守歌を父にぶつける
それが唯一、父に勝つ方法
父にあの歌を聞かせ、父に『理解という言葉』を覚えさせるしかない
絶大な力を持つ父に勝つにはそれしかなかった
俺は女の部屋を抜けだした
勿論、女の俺との記憶も消した
俺は宇宙を目指した
宇宙統一艦隊
俺はそれに向かって歌を口ずさんだ
「ラキヲ…?」
父の声が聞こえた
「私…あれ?昨晩何してたんだっけ…?」
私は朝起きて、ぼーっとしていた
昨晩、酒を飲んだ覚えは無い
でも記憶が無いとは…私も老けたか…ははは
ふと、昨日まで埃を被っていたはずのラジカセが机の上に置いてあった
録音ボタンが押されていた
ということは間違えて空テープをずっと上書きしていたわけか…
何故だか、その時の私は録音したものを聞きたくなっていた
カチッ
それは男の子の声だった
『夢の中で歩いているあなた
何故そんなことを言うのか?
それはあなたが目覚めないから
何故そんなことを言うのか?
それはあなたが前を見ないから』
綺麗な歌声
良い歌詞だった
あの子を失って、立ち直れ無い自分に対して喝を入れるような歌だった
知らず、私は涙を流していた
今日は快晴だ
まるで誰かが世界を救ったかのように
私は外に出掛けることにした
09月16日 (日)09時52分 |短編小説 │▲ |コメント(0) |トラックバック (0)
短編第二段『ウラヌスの子 前編』
「お前は美しくない。だから私の子供では無い」
「待ってください!お父様!!おとぉーさま!!!」
過去の話
忘れ去ろうとしたが、何年も生きた過去の記憶
俺はその記憶に打ち勝つ為に生きてきた
打ち勝つ為の力を手に入れ、いつかは父に復讐しようと思った
そのため、人間の世界を旅することとなった
「おーい」
声をかけられた
瞳を開ける
そこには女がいた
わりと気になる事は無い
普通の女だ
「あ、起きた?」
女は何が楽しいのか愉快そうだった
係わり合いになりたくない雰囲気だ
「……?」
ふと
身を起こし、辺りを見渡す
ココが室内であることに気付いた
段ボールを被って眠っていたはずが、気付けばこんな所に運ばれていたとは…
あまりに力を使い過ぎて反応が少し遅れた…
「警戒しなくて良いよ」
女は俺の構えを見て怯まずに言った
「何故、俺はココに?」
俺は構えをやめ、話をすることにした
「少年が路地の端っこで寝てるのに大人が見過ごす分けないでしょ」
少年…俺のことだ
傷ついた体の再構成のさいに、かなりの力を使う
それ故、少年の姿しか作れなかったわけだ
今ではこの体で定着している
多分、今更体を変えたところで体が馴染まず使えないであろう
「…そういうものなのか?」
「うん」
意外な話だ
人間が他の者を気にして行動するのか…
少し、この人間に興味が湧いて来た
「名前は?」
名を名乗る時は相手からと思うものの、悪い気はしなかった
「俺は…ラキヲ」
「…女…お前の考えで答えろ。この世の美しさとは何処にあると思う?」
俺は女にそう言った
「もちろん、ある思想家が口にしたとかは駄目だ。あくまで自分の考えだ」
こう釘をさしておいた
他人の言葉などいらない
俺はこの人間を知りたいと思った
俺は純粋に答えを待っていたのだ
情けない話、人間と目と目を合わせてこうやって話すのは初めてだ
少し緊張するものがあった
09月15日 (土)13時52分 |短編小説 │▲ |コメント(0) |トラックバック (0)
短編『告白の意味は変わらない 後編』
その後、体育教師にこってり叱られた
まぁ、僕が馬鹿なことをしたという自覚があり、態度を見せたからすぐに許してもらえた
「聞いたんだが…」
友人の一人が授業中、こっそり俺にむかって喋りかけた
「お前と清永、付き合ってるんだってなあ」
僕は授業中だと言うのに赤面する
顔が恥ずかしさで爆発しそうだ
「な…!なんで知ってるんだよ!!」
声を荒げてしまい、周りが一斉に僕の方を向く
「君、静かにしなさい」
教師が僕の頭をこずく
痛みが走るように中指全体に力を入れたようだ
「す…すいません」
「あれだけ大それた事を起こす二人だからな…まぁ、俺は反対しないぜ」
「う…うん。ありがと」
「あぁ…良いなぁ俺も名前と名前で呼び合う仲とかしたいなぁ…」
…そういえば
まだこの方一回も名前で呼んだことが無かった…
「…呼んでないよ」
「は?」
聞こえていないのか、それとも有り得ないと思ったのか
会話が冷めてしまうかもと…僕は恐くなって会話をやめた
名前で呼ぶことはステータスなのだそうだ
名前で…か
清永さん
清永夏絵
それが彼女の本名
夏絵…か…
廊下を清永さん…いや、夏絵が歩いてる
「な…夏絵!」
僕は赤面になりながらも呼んだ
………?
あれ?
折角、呼んだのに…気付いてもらえなかったのかな…?
「…清永さん!」
すると清永さんは僕に気付いてくれた
「あ、ゆーちゃん!お弁当作ったんだけど食べる?」
焼き玉葱が美味しかったと思いつつ、僕は帰路についた
まだまだこれからなんだ
ゆっくりやって行けば良い
休日
無性に外に出たくなった
本屋に行きたい…
僕は文章とかが好きで、よく課題図書とかを読破して行っている
そんな僕が気分的に
本当に気分的にいつも行く道を変えてみた
それはレッドといつも散歩に行くルートを経由する
そうすることで清永さんに会える気がしたんだ
そして、それは半分正解半分不正解だった
『清永』と書いてある家があった
家違いでは無いと思った
本当に勘だけど、好奇心が勘を押す
脅かしてやろうとブザーを押した
カチカチカチ
………?
故障かな?
仕方ない…帰ろうともおもったが、やはり好奇心が僕をおす
扉は開いていた
そこは散々に家具が荒らされ、床が傷だらけ、壁には穴が空いていた
信じられなかった
ココは…清永さんの家じゃない…
僕は帰ろうと思った
しかし、いきなりの押し入れをドンドン叩く音にびっくりした
僕は恐る恐る押し入れを開ける
そこにはガムテープで口を、手足を縛られて清永さんが!
「清永さん!!?」
僕はびっくりした
急いでガムテープをとってやった
「はぁ…はぁ…き、きみは…」
「どうしたんだ、清永さん!」
僕は何が何だか分からない状態にあった
「きみはたしか…同じ学年の…」
「早く逃げて!早く!!」
いきなり暴れだした
手足のガムテープを取ってあげたかったが、身の危険を感じた
「…わ…分かった!すぐに助けを…」
ガチャ
その時の戸音に気付き、僕は近くの大きな置物の後ろに隠れることにした
入ってきたのは清永さんだ
二人の清永さん
「ただいま、姉さん!」
元気な清永さん
いつも、僕にいつも喋っているような調子で言っている
「おかえり」
「あら?あらら?なんで口のガムテープ取ってるの?まさか、出ようと思った?ざーんねん」
子悪魔のような笑みを見せる清永さん
「………入れ代わった感想でも聞こうかと思ってね…」
縛られている清永さんは強気そうな冷静な目をしているが、体が震えている
「最高だよ!今まで得られなかった物全てがあるの」
清永さんは狂喜の表情で笑っていた
なにがそんなに楽しいんだ…
どっちかの清永さんは偽者だ
「姉さん、お腹減ったでしょ?玉葱買ってきたから食べよ」
そう言って清永さんは縛られている清永さんに再度ガムテープで口を塞ぎ、玉葱を眼前で切り始めた
道具は包丁だ…
徐々に縛られている清永さんの瞳から溢れんばかりの涙が出てくる
目をつぶろうとしても、無駄である
今まで冷静な目だった清永さんの目が涙でぐちゃぐちゃになっていく
そして恐れで体が震えている
「もっと美味しそうに待ってなよ、ゆーちゃんなら美味しそうだって私のお弁当見てたんだから」
ガムテープを外され、生の玉葱を口に入れられる清永さん
涙で辛そうな清永さんはゆっくりと清永さんを睨む
「なんで…こんなことをするの?」
「それ前も話したよね?まぁ良いけど。初恋の相手の話したよね?ゆーちゃん。ゆーちゃんを見守り、ずっと一緒に生きていくには同じ学校にいる必要がある。幸い、姉さんは友人が少なく、すり変わりやすかったのだー!」
僕は清永さんに食べさせられた玉葱の味が血のように感じられた
鉄のよいに歯切れの悪い味
ふと、物音を立ててしまった
「ゆ…ゆーちゃん?!なんで…」
その瞬間、清永さんは縛られている清永さんを睨む
二人の清永さんの睨み合い
「わざと、ゆーちゃんに聞かせるために仕組みやがったな!」
清永さんはいきなり縛られている清永さんを刺した
刺した
刺した
グチャ…ブスッ…グチャ…
ただ、僕は立ち尽くすのみ
ひとしきり刺した清永さんは泣いていた
「……姉さん…殺しちゃった…うぅう…」
そこにはいつもの清永さんの顔があった
僕に抱き着いて、僕を押し倒した
僕はどうすれば良いんだろう?
僕が好きな人が僕の好きな人を殺して泣いている
…そうだ
ここは彼女を安心させなきゃ
そうだ
そうに違いない
僕は清永さんの…夏絵の彼氏なんだ
夏絵の頭を撫でてやった
夏絵は僕に素直だ
「…好きだよ、夏絵」
ブスッ
「私は夏美だぁあああ!!!」
…そうか
そうだよね
夏絵は君のお姉さんの名ま………え………
「ゆーちゃん、好きだよ!」
好意を向けられるのは不愉快では無かった
だって、俺が一目惚れした相手だから
僕の為にガムテープで手当してくれた
身動きできないようにしてくれた
僕は清永さん家の押し入れの中でいつも清永さんの帰りを待っています
学校から帰ってきた清永さんは疲れているけど、僕をとても大事にしてくれます
清永さん
いや、夏美
「大好きだよ、夏美」
まぁ、僕が馬鹿なことをしたという自覚があり、態度を見せたからすぐに許してもらえた
「聞いたんだが…」
友人の一人が授業中、こっそり俺にむかって喋りかけた
「お前と清永、付き合ってるんだってなあ」
僕は授業中だと言うのに赤面する
顔が恥ずかしさで爆発しそうだ
「な…!なんで知ってるんだよ!!」
声を荒げてしまい、周りが一斉に僕の方を向く
「君、静かにしなさい」
教師が僕の頭をこずく
痛みが走るように中指全体に力を入れたようだ
「す…すいません」
「あれだけ大それた事を起こす二人だからな…まぁ、俺は反対しないぜ」
「う…うん。ありがと」
「あぁ…良いなぁ俺も名前と名前で呼び合う仲とかしたいなぁ…」
…そういえば
まだこの方一回も名前で呼んだことが無かった…
「…呼んでないよ」
「は?」
聞こえていないのか、それとも有り得ないと思ったのか
会話が冷めてしまうかもと…僕は恐くなって会話をやめた
名前で呼ぶことはステータスなのだそうだ
名前で…か
清永さん
清永夏絵
それが彼女の本名
夏絵…か…
廊下を清永さん…いや、夏絵が歩いてる
「な…夏絵!」
僕は赤面になりながらも呼んだ
………?
あれ?
折角、呼んだのに…気付いてもらえなかったのかな…?
「…清永さん!」
すると清永さんは僕に気付いてくれた
「あ、ゆーちゃん!お弁当作ったんだけど食べる?」
焼き玉葱が美味しかったと思いつつ、僕は帰路についた
まだまだこれからなんだ
ゆっくりやって行けば良い
休日
無性に外に出たくなった
本屋に行きたい…
僕は文章とかが好きで、よく課題図書とかを読破して行っている
そんな僕が気分的に
本当に気分的にいつも行く道を変えてみた
それはレッドといつも散歩に行くルートを経由する
そうすることで清永さんに会える気がしたんだ
そして、それは半分正解半分不正解だった
『清永』と書いてある家があった
家違いでは無いと思った
本当に勘だけど、好奇心が勘を押す
脅かしてやろうとブザーを押した
カチカチカチ
………?
故障かな?
仕方ない…帰ろうともおもったが、やはり好奇心が僕をおす
扉は開いていた
そこは散々に家具が荒らされ、床が傷だらけ、壁には穴が空いていた
信じられなかった
ココは…清永さんの家じゃない…
僕は帰ろうと思った
しかし、いきなりの押し入れをドンドン叩く音にびっくりした
僕は恐る恐る押し入れを開ける
そこにはガムテープで口を、手足を縛られて清永さんが!
「清永さん!!?」
僕はびっくりした
急いでガムテープをとってやった
「はぁ…はぁ…き、きみは…」
「どうしたんだ、清永さん!」
僕は何が何だか分からない状態にあった
「きみはたしか…同じ学年の…」
「早く逃げて!早く!!」
いきなり暴れだした
手足のガムテープを取ってあげたかったが、身の危険を感じた
「…わ…分かった!すぐに助けを…」
ガチャ
その時の戸音に気付き、僕は近くの大きな置物の後ろに隠れることにした
入ってきたのは清永さんだ
二人の清永さん
「ただいま、姉さん!」
元気な清永さん
いつも、僕にいつも喋っているような調子で言っている
「おかえり」
「あら?あらら?なんで口のガムテープ取ってるの?まさか、出ようと思った?ざーんねん」
子悪魔のような笑みを見せる清永さん
「………入れ代わった感想でも聞こうかと思ってね…」
縛られている清永さんは強気そうな冷静な目をしているが、体が震えている
「最高だよ!今まで得られなかった物全てがあるの」
清永さんは狂喜の表情で笑っていた
なにがそんなに楽しいんだ…
どっちかの清永さんは偽者だ
「姉さん、お腹減ったでしょ?玉葱買ってきたから食べよ」
そう言って清永さんは縛られている清永さんに再度ガムテープで口を塞ぎ、玉葱を眼前で切り始めた
道具は包丁だ…
徐々に縛られている清永さんの瞳から溢れんばかりの涙が出てくる
目をつぶろうとしても、無駄である
今まで冷静な目だった清永さんの目が涙でぐちゃぐちゃになっていく
そして恐れで体が震えている
「もっと美味しそうに待ってなよ、ゆーちゃんなら美味しそうだって私のお弁当見てたんだから」
ガムテープを外され、生の玉葱を口に入れられる清永さん
涙で辛そうな清永さんはゆっくりと清永さんを睨む
「なんで…こんなことをするの?」
「それ前も話したよね?まぁ良いけど。初恋の相手の話したよね?ゆーちゃん。ゆーちゃんを見守り、ずっと一緒に生きていくには同じ学校にいる必要がある。幸い、姉さんは友人が少なく、すり変わりやすかったのだー!」
僕は清永さんに食べさせられた玉葱の味が血のように感じられた
鉄のよいに歯切れの悪い味
ふと、物音を立ててしまった
「ゆ…ゆーちゃん?!なんで…」
その瞬間、清永さんは縛られている清永さんを睨む
二人の清永さんの睨み合い
「わざと、ゆーちゃんに聞かせるために仕組みやがったな!」
清永さんはいきなり縛られている清永さんを刺した
刺した
刺した
グチャ…ブスッ…グチャ…
ただ、僕は立ち尽くすのみ
ひとしきり刺した清永さんは泣いていた
「……姉さん…殺しちゃった…うぅう…」
そこにはいつもの清永さんの顔があった
僕に抱き着いて、僕を押し倒した
僕はどうすれば良いんだろう?
僕が好きな人が僕の好きな人を殺して泣いている
…そうだ
ここは彼女を安心させなきゃ
そうだ
そうに違いない
僕は清永さんの…夏絵の彼氏なんだ
夏絵の頭を撫でてやった
夏絵は僕に素直だ
「…好きだよ、夏絵」
ブスッ
「私は夏美だぁあああ!!!」
…そうか
そうだよね
夏絵は君のお姉さんの名ま………え………
「ゆーちゃん、好きだよ!」
好意を向けられるのは不愉快では無かった
だって、俺が一目惚れした相手だから
僕の為にガムテープで手当してくれた
身動きできないようにしてくれた
僕は清永さん家の押し入れの中でいつも清永さんの帰りを待っています
学校から帰ってきた清永さんは疲れているけど、僕をとても大事にしてくれます
清永さん
いや、夏美
「大好きだよ、夏美」
09月12日 (水)16時04分 |短編小説 │▲ |コメント(2) |トラックバック (0)
合同企画短編第1弾『告白の意味は変わらない 前編』
「ゆーちゃん、好きだよ!」
好意を向けられるのは不愉快では無かった
だって、僕が一目惚れしていた相手だから
両想いだと分かったのは、数ヶ月前の犬の散歩の最中
偶然、出会ったとき
僕はその時、いきなり会ってびっくりした
「こ…こんにちは…清永さん!」
「こんにちは!」
学校の時のクールな彼女と違い、休日は元気な人だった
「ランニングの最中だけど、一緒に走る?」
「は…はい!」
わんわん
僕の愛犬 レッドは知らない相手だから吠えまくっている
そんなレッドに手を差し延べた清永さん
ガブッ!
血が出た
僕は迷わず、レッドを叩いた
「痛たた…」
「大丈夫?!すぐ病院連れてくよ!!」
「…医者は嫌いだから、良いよ」
「じゃあ僕の家に来て!!」
運動の真っ最中だった清永さんは血の流れが良く、血がよく出る
僕は慣れない手つきで包帯を巻いた
両親とは別居しているから最低限のことはできるが、手当てなんてする機会が無かったから…
「ありがと!」
それでも清永さんは僕に思いっきりの笑顔を見してくれた
「あ…あの清永さん」
「…ん?」
「付き合ってください…!」
僕はこの笑顔を独り占めにしたかったのかもしれない
そして今に至る
ただ、清永さんは頭が良いので難関大学を受けようと考え、いつも勉強している
デートとか、下校中に近所に寄ったくらいしかない
流石に男としての焦りもある
「清永、変わったよな」
ある日、友人の一人が僕に言ってきた
「そうだね、元気になったというか…」
クールな彼女はやめた
それは僕と付き合う時の誓いらしい
「無愛想な自分をあなたに見せたく無いからね」
清永さんはそう言っていた
「それとはちげーよ、あいつ成績悪くなってんだって…悪い男にでも騙されたんかな」
…え、まさか…
僕が問題…?
「清永さん!」
「どうしたの?ゆーちゃん」
ハァハァ…
息遣いが荒い
体育の時間、男子は野球、女子はプールだった
プールは専用の施設を借りている為に遠く、僕は猛スピードで自転車を走らせて来たのだ
水着の清永さんは可愛いなぁ
…いや、そんなことはどうでも良い!
「清永さん…僕のせいで学力下がってるんだったら、その…別れよっか…?」
嫌だった
手放したくない
でも、僕は彼女の足手まといにはなりたくなかったんだ
清永さんは長い沈黙の中、やっぱり笑顔になった
「学力下げたのは自分の責任だよ。ゆーちゃんが気にすることは無いよ」
「そ…そう?」
納得できているのかできていないのかは自分の中でよく分からない状態にあった
その時、頬が暖かかった
「!?」
人前で公然と…!
「これ、私のファーストキスだから…好きだよ、ゆーちゃん」
僕は周りの視線が恥ずかしくて走るように逃げていってしまった
好意を向けられるのは不愉快では無かった
だって、僕が一目惚れしていた相手だから
両想いだと分かったのは、数ヶ月前の犬の散歩の最中
偶然、出会ったとき
僕はその時、いきなり会ってびっくりした
「こ…こんにちは…清永さん!」
「こんにちは!」
学校の時のクールな彼女と違い、休日は元気な人だった
「ランニングの最中だけど、一緒に走る?」
「は…はい!」
わんわん
僕の愛犬 レッドは知らない相手だから吠えまくっている
そんなレッドに手を差し延べた清永さん
ガブッ!
血が出た
僕は迷わず、レッドを叩いた
「痛たた…」
「大丈夫?!すぐ病院連れてくよ!!」
「…医者は嫌いだから、良いよ」
「じゃあ僕の家に来て!!」
運動の真っ最中だった清永さんは血の流れが良く、血がよく出る
僕は慣れない手つきで包帯を巻いた
両親とは別居しているから最低限のことはできるが、手当てなんてする機会が無かったから…
「ありがと!」
それでも清永さんは僕に思いっきりの笑顔を見してくれた
「あ…あの清永さん」
「…ん?」
「付き合ってください…!」
僕はこの笑顔を独り占めにしたかったのかもしれない
そして今に至る
ただ、清永さんは頭が良いので難関大学を受けようと考え、いつも勉強している
デートとか、下校中に近所に寄ったくらいしかない
流石に男としての焦りもある
「清永、変わったよな」
ある日、友人の一人が僕に言ってきた
「そうだね、元気になったというか…」
クールな彼女はやめた
それは僕と付き合う時の誓いらしい
「無愛想な自分をあなたに見せたく無いからね」
清永さんはそう言っていた
「それとはちげーよ、あいつ成績悪くなってんだって…悪い男にでも騙されたんかな」
…え、まさか…
僕が問題…?
「清永さん!」
「どうしたの?ゆーちゃん」
ハァハァ…
息遣いが荒い
体育の時間、男子は野球、女子はプールだった
プールは専用の施設を借りている為に遠く、僕は猛スピードで自転車を走らせて来たのだ
水着の清永さんは可愛いなぁ
…いや、そんなことはどうでも良い!
「清永さん…僕のせいで学力下がってるんだったら、その…別れよっか…?」
嫌だった
手放したくない
でも、僕は彼女の足手まといにはなりたくなかったんだ
清永さんは長い沈黙の中、やっぱり笑顔になった
「学力下げたのは自分の責任だよ。ゆーちゃんが気にすることは無いよ」
「そ…そう?」
納得できているのかできていないのかは自分の中でよく分からない状態にあった
その時、頬が暖かかった
「!?」
人前で公然と…!
「これ、私のファーストキスだから…好きだよ、ゆーちゃん」
僕は周りの視線が恥ずかしくて走るように逃げていってしまった



